『少年』は、その年(1968年)、好きであったテレビ番組『てなもんや三度笠』が終了したことで、もう、『チョーダイ!』とも云う蛇口一角(財津一郎)を見れなくなったのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その83]の続き)
「(名は体を表す、っていうものな)」
ある日、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の正門を出て少ししたところで前方に見かけた女子生徒、面長な日本的な顔の美少女が、『パルファン』子さんであることを知ったエヴァンジェリスト少年の感想であった。
「(ああー!)」
その美少女の名前を思っただけで、鼻腔が拡がり、芳しい香りが、鼻の粘膜から染み入り、酔ったような感覚に囚われた。
「(音楽室に行くから、ここを通るだけなんだ)」
誰に訊かれた訳でもないのに、心の中で言い訳する。校舎内で、頻繁に1年の『パルファン』子さんのクラスの前を通るようになっていた。
「(『パルファン』子さんと会う為じゃないんだ)」
と思いながらも、その教室の前の廊下を通る時、エヴァンジェリスト少年の視線は、出入口から教室の中へと向う。
ブラスバンドの練習を終え、『ミドリチュー』の正門を出る時、前方に『パルファン』子さんがいるのではないか、と鼓動は速くなるが、
「(なんだ、違う)」
見かける女子生徒は、『パルファン』子さんではない。
「(もう通ったのかなあ?)」
自宅に帰ると、応接間から垣根と門越しに見える道路を見る。『パルファン』子さんは、エヴァンジェリスト少年の自宅前の道路を通って登下校しているのは街がない。
「(初めてだ)」
年下(学年が下)の女の子を好きになるのは初めてであった。
「(これが普通なんだ。『妻』は年下の場合が多いんだ)」
『パルファン』子さんはもう、エヴァンジェリスト少年の新たな心の『妻』になっていた。
(続く)
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