『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『ウルトラセブン』が終了し、もう『モロボシダン』という聞きなれない名前の格好いい男に会えなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その96]の続き)
「ボクと付き合ってくれないか?!」
広島市旭町の狭い道で、少女は振り向いた。『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんに追い付いたエヴァンジェリスト少年の口から、言葉が出た。
「ボクと付き合ってくれない?!」
本能が発した言葉であった。しかし、自らが発したその言葉に疑問が湧く。
「(付き合うって、何をするのだ?隠れんぼをするのか?え?2人だけで隠れんぼか?友だちを誘うのか?)」
隠れんぼも楽しいとは思うが、『大人』になってきた自分がしたいことはそれではないことは、分っていた。
「(2人でどこかに出掛けるのか?でも、どこに行くのだ?翠町公園か?公園に行って何をするのだ?滑り台か?ブランコか?)」
いや、そんなことでは我慢はできない自分を知っていた。
「(ウチに入れるのか?平日は、夕方まではボク以外はウチに誰もいない。『パルファン』子さんのウチに行くのか?彼女のウチにも平日、夕方までは家族はいないのか?)」
妄想が膨らむ。
「(家族がいなかったらどうなんだ?いないと、できるかもしれない。何が?少なくともキスは…..ああ、いいのか!?中学生がいいのか、そんなことをして!?」
妄想以外のものも膨らむ!
「(んぐっ!)」
少年は、股間を抑える。
「(いや、したいのは、キスではない!いやいや、キスもしたいが、それ以上のことだ。ああ、『結婚』だ。でも、まだ中学生なんだ。でも……)」
胸で大きく呼吸をする。
「(んぐっ!)」
再度、股間を抑える。
「(したい!けれど、『結婚』は、まだ許されないのだ。ボクにはまだ稼ぎがない。『妻』を食べさせていくことはできない。でも……)」
もっと強く股間を抑える。
「(んぐっ!)」
『パルファン』子さんの像が、眼前に浮かぶ。
「(したい!けれど……)」
(続く)
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