2019年11月18日月曜日

ハブテン少年[その95]




『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『ウルトラセブン』が終了し、もう『セブン、セブン、セブーン!』という主題歌を聞けなくなったのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「ボクと付き合ってくれないか?!」

とエヴァンジェリスト少年は、声をかけたのだ。

「ボクと付き合ってくれない?!」

その日、彼の自宅前を通って帰宅する『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんを追い、廃線となった宇品線を超え、旭町の狭隘な道で彼女に追いつき、そう声をかけたのだ。

「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」

どうして、そう云ったのか、分らない。

「(『パルファン』子さんに云うんだ)」

決めていたのは、それだけで、何を云うのかは決めていなかったのだ。

「(ボクは、『パルファン』子さんと結婚するんだ!)」

そう思っていたことは確かだ。しかし、2人共、まだ中学生であった。中学生はまだ結婚できない。そのことは分っていた。




「(んぐっ!)」

『結婚』のことを思うと、体の下部から突き上げてくるものがある。

「(『パルファン』子っ!)」

呼び捨てにした。もう中学生で、『結婚』とは『何』をするものか理解していた。その『何』をする時のことを考え(具体的なイメージを抱くことはまだ出来なかったが)、『その時』、自然と彼女を、『妻』を呼び捨てにした。本能である。


(続く)



0 件のコメント:

コメントを投稿