『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『泣いてたまるか』が終了し、もう切ない気分になれなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その98]の続き)
「(ああー!名前ー!)」
エヴァンジェリスト少年は、そこに蚊がいたら、木に空いた空洞と勘違いして入ってしまいかねないように、呆然と口を開けていた。
「(自分の名前を云わなかったあ!ああ!)」
彼の自宅前を通って帰宅する『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんを追い、廃線となった宇品線を超え、旭町の狭隘な道で彼女に追いつき、
「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」
と、思い切って云ったものの、自分の名前を『パルファン』子さんに告げなかったのだ。
「(ああ…..)」
恥ずかしかった。大事なところで、またケアレスミスをしてしまったのだ。
「(名乗りもせずに告白するなんて、ああ、間抜けな男と思われただろう)」
……しかし、眼前に浮かぶ『パルファン』子さんは、じっとエヴァンジェリスト少年を凝視めていた。そして、おもむろに口を開いた。
「….考えます」
そうだ!それは、幻でも妄想でもなかった。確かに、『パルファン』子さんは、云ったのだ。
「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」
という名乗りもしない上級生と見える少年の問いに対して、
「….考えます」
と答えたのだ。
「んぐっ!」
再び、股間に手を持っていった。
(続く)
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