『少年』は、その前年(1967年)、好きであったテレビ番組『スチャラカ社員』が終了したことで、もう、長門勇の『おえりゃあせんのお』という岡山弁ギャグが聞けなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その89]の続き)
「(行くぞ!行くぞ!)」
自宅の玄関を出て、門を出て、今、『パルファン』子さんが向って行った方向に体を向け、歩き始める。
「(いいのか?行くのか?)」
鼻腔は拡がり、息を大きく吸い、大きく息を吐く。
「(行くんだ!行くんだ!)」
それは決意であったのかもしれないし、自身への叱咤であったのかもしれない。
「(行くぞ!行くぞ!)」
エヴァンジェリスト少年の足は、左……..右、左…..右、左…右、と段々に速度を上げながら、『パルファン』子さんの背を追う。
「(もう….)」
左右、左右、左右、と、『パルファン』子さんとの距離が段々と近付いていく。
「(もう….戻れないぞ!いや、戻らないぞ!)」
既に廃線となっていた宇品線の線路を越える。線路は、道路より少し高いところにある。線路へ登る。
「ふんっ!」
線路を降りる。自宅の道を挟んだ隣は西旭町であったが、宇品線の線路を越えると、そこはもう旭町だ。
「(行くぞ!行くぞ!)」
線路を越えたことで、尚更、ルビコン川を渡った気分となった。
「(行くんだ!行くんだ!)」
『パルファン』子さんの背が、段々と近付く。
(続く)
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