『少年』は、その前年(1967年)、好きであったテレビ番組『スチャラカ社員』が終了したことで、もう、人見きよしの『ちーとも知らなかったわあ』というギャグが聞けなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その90]の続き)
「(ああ、もう……!)」
何故か絶望感に近い感覚に襲われながら、エヴァンジェリスト少年は、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんの背中に近付いて行った。
「(引き返すか?!)」
脳みその愚問に、エヴァンジェリスト少年の足は、耳を貸さない。足に耳があったかどうかは知らない。
「ふんっ!」
というエヴァンジェリスト少年の鼻息が聞こえたかもしれない程に、『パルファン』子さんはもう眼の前にいた。
「(んぐっ!)」
宇品線を越えた旭町のその道路は、翠町や西旭町の道路よりも狭くなっており、『パルファン』子さんから放たれたと思われる香りが、エヴァンジェリスト少年を覆う。
「(行くぞ!行くぞ!)」
行くも行かないも、引き返すも引き返さないも、もう、少女は、背後に何らかの異常な気配を感じていたであろう。それ程の距離であった。
「(行くんだ!行くんだ!)」
狭隘な道に、他に人はいない。
(続く)
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