(うつり病に導かれ[その61]の続き)
「あら、まあ!」
『タノ9薬局』のカウンターで、『スミコ』と呼ばれた八重歯の星由里子に酷似した女性は、カウンターの向こう側にいるビエール・トンミー氏に、ぐっと顔を寄せてきた。ビエール・トンミー氏から、自分が使っているのは、Windowsだと聞いたのだ。
「(んぐっ!)」
しばらくなりを潜めていた『股間』がまた蠢き始めた為、ビエール・トンミー氏は、慌てて両手で抑えに入った。
「本当ですの?」
『スミコ』は、更に、ビエール・トンミー氏に顔を寄せてきた。
「んぐ….いえ、私は、生まれてこのかた、嘘はついたことがありません」
と、云いながら、ビエール・トンミー氏は、赤面した。嘘を云ってしまったことを自覚したからだ。
「では、福岡行のJANA便でWindowsをお使いになったこともおあり?」
『スミコ』は、更に、ビエール・トンミー氏に顔を寄せ、『スミコ』の鼻がビエール・トンミー氏の鼻に付かんばかりとなった。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏は、『股間』だけではなく、自らの心の衝動も抑えなくてはならなかった。
「(舐めたい!)」
口の両端をぐっと引き、自らの舌が、マムシのように口から飛び出し、『スミコ』の鼻を襲わぬようにした。
「どうですの!?福岡行のJANA便でWindowsをお使いになったこともおありなの?」
『スミコ』は、口を尖らせる。
「(まずい!舐めたい、口も!)」
ビエール・トンミー氏は、更に強く口の両端をぐっと引いた。
「ん、もう!どうしてお答えにならないの!?福岡行のJANA便でWindowsをお使いになったこともおありですの?」
それ以上、『スミコ』を怒らせる訳にはいかず、ビエール・トンミー氏は、舌が勝手なことをせぬよう、慎重に口を開いた。
「…んん、…ありますが…」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿