(うつり病に導かれ[その66]の続き)
「そうだよ、云うまでもなく、原爆だ。原爆の爆風でこの鉄の扉は歪んだのだ」
という友人のエヴァンジェリスト少年の説明は聞くまでもないことであった。
「知ってるよ」
ビエール・トンミー少年は、憤慨気味に答えた。
「ふん!君は、これが何か、ここが何かを知っていながら、あんなことを思い出していたのか!?」
友人は、『被服廠』(正式には『被服支廠』らしいが、当時、地元では『被服廠』と呼んでいた)を指差しながら、ビエール・トンミー少年を睨みつけた。
「知ってるさ」
ビエール・トンミー少年は、睨み返した。
「知っていて君は、ここで、『ローラ』だとか、『外田有紀』、『松坂慶美』、『スミコ』だとかのことを思い出していたのか!?」
「へ?」
「君は、『被服廠』が原爆の爆風を受けただけではなく、幾人もの被爆者が、幾体もの遺体が運び込まれたことを知っていて、その横を歩きながら、『んぐっ!』と『股間』を抑えているのか!?」
エヴァンジェリスト少年の口撃は容赦ない。
(続く)
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