「おい、友人。君はもう手を挙げたか?」
友人のエヴァンジェリスト氏からのiMessageだ。
「なんだ?またまた妙なことを云うな」
ベッドサイドに置いてあったiPhone X が震え、『ホルン』音がなり、目を覚ましたビエール・トンミー氏は、片眼を開け、手を伸ばし、FaceIDでロック解除し、返信した。
「その様子では、まだ手を挙げていないようだな」
「小学校の授業でもあるまいし、この歳(65歳)で手なんか挙げはしない」
「六十肩か?」
「ああ、君ともあろう者が情けない!」
「はあ?」
「『六十肩』なんてものは本来、ないのだぞ。『四十肩』もそうだ。元々は、『五十肩』なんだ。五十歳代で発症することが多いから『五十肩』だ。それがいつの間にか、発症した年代毎に、『四十肩』とか『六十肩』とか云うようになったんだ」
「おお、さすが、天下のハンカチ大学商学部卒で、在学中、フランス語経済学で『優』をとっただけのことはあるな。フランス語は、『il』(彼)と『elle』(彼女)しか知らないのに」
「どこかの経済団体のトップで、給付金を電子マネーでとか云う歳下の先輩もいたがな」
「おお、それ、それ、それだ!」
「は?何がそれだ?経済団体か?給付金か、電子マネーか?指示語を使う時には、明確にしろよ」
「給付金だ」
「給付金がどうした。10万円もらえるんだろう?」
「そうだ、それだ。君は、まだ手を挙げていないのか?ボクは、もう手を挙げたぞ」
「ああ、『手を挙げた者に支給する』っていうことだな」
「そうだ。だから、もう手を挙げたぞ」
「いや、まだ手続は始っていないだろ」
「『手を挙げた者に支給する』と知って、その場でボクは、家で直ぐに手を挙げたんだ。これでもう給付金をもらえるんだ」
「正気か?自己申告しろということだぞ」
「いや、『手を挙げた者に支給する』と、太郎か次郎だかが、記者会見で云ってたぞ。太郎かな、いや、次郎かな?太郎次郎のどっちが猿か忘れたから、よく分からんし、ひょっとしたら記者会見をしていたのは猿の方だったかもしれんが」
「太郎でも次郎でもいいが、君が手を挙げたことをどうやって確認するんだ?」
(続く)
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