(うつり病に導かれ[その68]の続き)
「(シャレか?塀で『ヘエ』って)」
と、ビエール・トンミー少年も、友人のエヴァンジェリスト少年越しに、原爆の爆風で上部が『へ』の字型になってしまった『被服廠』のレンガ塀に眼を向けた。
「ボクはねえ」
友人は、ビエール・トンミー少年に方に振り向き、一瞬、強い視線を向け、
「『原爆反対』ではないんだ」
と云うと、前方に顔を向け、歩き始めた。
「へ!?」
友人の思わぬ発言に、ビエール・トンミー少年は屁のような声を出した。
「君は、原爆以外の武器なら、核兵器を使わなければ、戦争をし、人を殺してもいいと思うのか?」
友人は、勝手に速めの歩を進める。
「そんなことはない!」
ビエール・トンミー少年は、腹立たしげに答えた。
「君は、多数の人が死ぬから原爆がいけないと思うのか?」
「そんなことはない!」
「君は、放射能が残るからとか、その影響が被爆後も被爆した本人やその子孫に影響を残すから原爆がいけないと思うのか?原爆でなければ、戦争は、人やその子孫に何の影響も残さないと思っているのか?」
「いい加減にしないか!」
「君は、君が忌み嫌う原爆の悲惨さを残し、人々にその悲惨さを忘れさせない物として、この『被服廠』の解体に憤慨しているのか?」
「はあー!それはそうだろうが!屁理屈を云うな!」
ビエール・トンミー少年は、我慢の限界を超え、叫び声をあげた。しかし……
(続く)
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