(うつり病に導かれ[その64]の続き)
「そうよ、アタシよ!」
『タノ9薬局』のカウンター越しに、『スミコ』と呼ばれた星由里子に酷似した女性は、ビエール・トンミー氏の心を読んだかのような言葉を吐いた。
「『原宿の凶器』を隠したシーツをめくったのは、そう、アタシよ!」
「(おお!『原宿の凶器』を知っているということは!)」
ビエール・トンミー氏は、自らの股間に視線を落とした。
「だから、アタシよ!コケシのマムシ、マムシのコケシの貴方ったら、『妻よ、許せ!もう無理だあ!!!』と叫んだわ!」
牙と化した『スミコ』の八重歯が、ビエール・トンミー氏の頬に触れた。
「そして、アタシをベッドに引き寄せ、『いいから来るんだ!』と云ったのに!」
「(んぐっ!)」
「なのに、なのに、貴方ったら、どこに消えたのよおー!」
牙が、頬の皮を貫いた。
「おおおおおー!」
ビエール・トンミー氏は、仰け反り、叫び声を上げた。
(続く)
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