2020年4月11日土曜日

うつり病に導かれ[その72]






「ワレか、『被服廠』の解体、云うたんは!

菅原文太に酷似した角刈りの男の、にんにく臭い息が、ビエール・トンミー少年の顔を襲った。





「ウッ!」

ビエール・トンミー少年は、思わず、顔を背けた。

「おんどりゃー、『被服廠』をなんじゃあ思うとんならあ!こっち向けえやあ!」

ビエール・トンミー少年は、息を止めて顔を正面に向けた。

「ここはのお…」

菅原文太に酷似した角刈りの男は、『被服廠』を指差した。

「ボ、ボ、ボクが、『被服廠』の解体と云ったのは…」

恐怖を抑えながら、ビエール・トンミー少年は、思い切って、声を発した。しかし!

「ほりゃ、やっぱりワレか、『被服廠』の解体、云うたんは!

と云うと、菅原文太に酷似した角刈りの男は、ビエール・トンミー少年の股間に手を伸ばし、ギュッと締め上げた。

「ギャッ、ギャッ、ギャッー!」

ビエール・トンミー氏は、叫び、閉じた眼の中で稲妻が走った。


(続く)




0 件のコメント:

コメントを投稿