「🎶♩♫🎵♩🎶🎶🎵♩♫🎶♩」
軽快に走るような音であった。
「は?」
エヴァンジェリスト氏は、机に置いたiPhoneの画面を見た。
「アイツか」
インテリだが如何にも変態っぽい髭を生やした男の顔が画面に映っていた。『Google Duo』で、友人が電話をしてきたのだ。ビデオ通話ではなく、音声通話であった。
「なんだ?」
応答ボタンを押し、面倒臭そうに応える。痛めた左手中指を伸ばしているところだったのだ。それに、あの男の用なんて、どうせクダラナイことに決っているからだ。
「おい!ワテは怒っとるでえ!」
友人のビエール・トンミー氏は、しばらく前から怪しい関西弁を使うようになっていた。
「そろそろ止めんか、その嘘くさい言葉」
「そないなこと云うと、ワテはもっと怒るでえ!」
「まあ、なんでもいいから、早く用を云え。何を怒っているんだ?また、駐車違反ステッカーでも貼られたか?」
「うっ!ちゃう、ちゃう!馬鹿にしてけつかると、君に対してでも怒るでえ!」
「ほな、どないしはったんでっか?」
「君の方こそ、似非関西弁やないけ」
「なんやて、ワテは、神戸と広島のハーフでんねん。元々は九州男児のおまはんとはちゃうで」
「とにかくワテは怒っとるんやでえ」
「どうしてだ?」
「『給付金』や」
「10万円では不足なのか?」
「まあ不足は不足やが、そのことやない。『年金受給者には』っちゅうことや」
(続く)
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