(うつり病に導かれ[その63]の続き)
「福岡では、JANAホテルにお泊りでしたわね?」
と云うと、『スミコ』は、口の端を歪め、八重歯を光らせた。
「え!」
ビエール・トンミー氏は、全身が硬直した。
「JANAの機内で知り合ったCAと福岡のJANAホテルにお泊りでしたわね?」
『タノ9薬局』のカウンター越しにビエール・トンミー氏を凝視める、『スミコ』と呼ばれた星由里子に酷似した女性の顔が近づき、彼女の八重歯も大きく見えてくる。
「(いや、そんなはずは…)」
ビエール・トンミー氏は、もう椅子の背についており、それ以上、身を後退させられない。
「そのCAに頼まれて、シタんでしょ!?」
『スミコ』の八重歯が、牙のように見えてくる。
「(んぐっ!)」
過去の記憶と眼の前の現実の両方が、ビエール・トンミー氏の股間に『異変』を生じさせる。
「そのCAに頼まれて、イレたんでしょ!?」
「(んぐっ!)」
「イレたのは、『いきなりPDF』だけだったと思ってるの!」
『スミコ』の牙が、いや八重歯が、刺さるほどに迫ってくる。
「(まさか、あの時のCAが…!?)」
とは思うものの、アノ時は、股間の『欲望』が視力にはるかに勝り、顔はよく覚えていない。かなりの美人ではあったことは確かだが、星由里子に似ていたかどうか…
(続く)
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