2020年4月3日金曜日

うつり病に導かれ[その64]






「福岡では、JANAホテルにお泊りでしたわね?」

と云うと、『スミコ』は、口の端を歪め、八重歯を光らせた。

「え!」

ビエール・トンミー氏は、全身が硬直した。

「JANAの機内で知り合ったCAと福岡のJANAホテルにお泊りでしたわね?」

『タノ9薬局』のカウンター越しにビエール・トンミー氏を凝視める、『スミコ』と呼ばれた星由里子に酷似した女性の顔が近づき、彼女の八重歯も大きく見えてくる。

「(いや、そんなはずは…)」

ビエール・トンミー氏は、もう椅子の背についており、それ以上、身を後退させられない。

「そのCAに頼まれて、シタんでしょ!?」

『スミコ』の八重歯が、牙のように見えてくる。





「(んぐっ!)」

過去の記憶と眼の前の現実の両方が、ビエール・トンミー氏の股間に『異変』を生じさせる。

「そのCAに頼まれて、イレたんでしょ!?」
「(んぐっ!)」
「イレたのは、『いきなりPDF』だけだったと思ってるの!」

『スミコ』の牙が、いや八重歯が、刺さるほどに迫ってくる。




「(まさか、あの時のCAが…!?)」

とは思うものの、アノ時は、股間の『欲望』が視力にはるかに勝り、顔はよく覚えていない。かなりの美人ではあったことは確かだが、星由里子に似ていたかどうか…


(続く)



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