(うつり病に導かれ[その69]の続き)
「え!?」
ビエール・トンミー少年は、友人のエヴァンジェリスト少年が放った言葉に、再び、時空に関する疑問に襲われた。
「(どういうことなんだ?)」
広島県立広島皆実高校に通学する為、通っていた煉瓦造りの古い建物である『被服廠』(正式には『被服支廠』らしいが、当時、地元では『被服廠』と呼んでいた)の横の道で、エヴァンジェリスト少年は、
「(自分は)『原爆反対』ではないんだ」
と、思いがけない言葉を発し、更に、
「君は、原爆以外の武器なら、核兵器を使わなければ戦争をし、人を殺してもいいと思うのか?」
等と、挑発するかのような態度を見せた。そして、
「君は、君が忌み嫌う原爆の悲惨さを残し、人々にその悲惨さを忘れさせない物として、この『被服廠』の解体に憤慨しているのか?」
と問うてきたのだ。友人は、間違いなくそう云った。
「き、き、君は、どうして今、『被服廠』の解体という話が出てきていることを知っているのだ?」
ビエール・トンミー少年は、友人に疑問をぶつけた。
「『被服廠』の解体の話が出てくるのは、2019年の頃だ。ボクたちが高校生の時代にはそんな馬鹿げた話なんて出ていなかったぞ!」
「ふん、その通りだ。でも、君だって『被服廠』の解体の話を知っているじゃないか」
「へ!?」
ビエール・トンミー少年は、また、屁のような声を出した。その時……
「オイオイオイ、オイオイオイ、オイ!」
ドスの利いた声が、2人の前に立ちはだかった。
(続く)
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