「OEMっていうのは、Original Equipment Manufacturerの略なんです」
マーケティング部の壁際に置かれたパソコンの前で、ビエール・トンミー氏は、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』に対して、彼女が理解できないことを承知で専門的な説明をしていた。
「オリジナル…エ、エクイ…」
マダム・トンミーは、たどたどしく、ビエール・トンミー氏の言葉をなぞろうとしたが、途中で小首を傾げ、それ以上、」言葉が続かなかった。
「(んぐっ!可愛いい!)」
ビエール・トンミー氏は、その場で、『マーケティング部の華』であり『原宿のマドンナ』である眼の前の女性を抱きしめたかったが、その衝動をなんとか抑え、説明を続けた。
「このOEMは、他社のブランドの製品を製造する企業のことなんです」
彼自身が開発したマーケティングのシステムの操作説明を『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』にしなくてはいけなかったのだが、操作説明の前提としてシステム環境の説明をする内に、彼女の混乱ぶりが愛おしく、サディスティックな本能が鎌首をもたげてきたのだ。
「他社の製品を…?」
マダム・トンミーの方も、彼女が理解できないこと専門的な説明を受けることに、体の芯が疼くような、そう、マゾヒスティックな快感を覚えていた。
「OEMは、Original Equipment Manufacturingとしてもいいので、他社のブランドの製品そのもののでもあるんです」
2人の間には暗黙の諒解が生じ、阿吽の呼吸で、責めてみせ、責められてみせていたが…..
(続く)