「まあ、女の子では珍しいかもしれないわね」
社内のエレベーター・ホールで、顔面を紅潮させている同僚のトシ代に相反して、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』の口調は、冷静であった。
「男子だって、あんまりそういうのないんじゃないの?」
トシ代は、マダム・トンミーの見解に異を唱えた。ベッドの上で父親や弟とスルというのは、男女を問わず、普通にはないことだと思うからだ。
「あらご存じないの?男子の方は、三銃士だとか四天王だとかで大人気よ」
「ええ?『サンジュウシ』?『シテンノウ』?」
「三銃士は、橋本真也、蝶野正洋、武藤敬司よ。四天王は、三沢光晴、川田利明、田上明、小橋健太よ」
「あら、あなた、そんなに沢山、お相手がいるの?!」
「私は、新日派だから、四天王には余り興味はないんだけど…」
「『シンニチ』?何のことか分かんないけど、『シテンノウ』には興味ないってことは、『サンジュウシ』だったかっしら、そちらの3人の男性はお相手なの?」
「お手合せで願えれば、とは思うけど、あの人たちの技を受けたら、私なんか一発でノックアウトだわ」
「あーら、その人たちって、そんなに『強い』の?」
「そりゃ、強いわよお。でも、DDTとかSTFとかムーンサルトプレスを受けてみたいわ」
「え?DD..プレス?そんな名前の『タイイ』ってあったかしら?」
(続く)
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