2020年11月21日土曜日

バスローブの男[その23]

 


「(トンミーさんって、やっぱりプロレスをなさるんだわ!)」


『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、社内のエレベータホールにいる赤面している同僚のトシ代の横で、彼女とは別の意味で興奮していた。トシ代は、ビエール・トンミー氏が『原宿の凶器』であると聞き、その意味を知るトシ代は興奮を隠せないでいたのだが…一方、マダム・トンミーは、


「(『お局様』とだけでなく、私とも一戦を交えて欲しい!)」


と、ビエール・トンミー氏が彼女をヘッドロックに捉え、レフェリーの眼を盗んで凶器で(多分、ボールペンだ)彼女の額を突く姿を想像し、余りの興奮にお漏らしをしそうになった。




「うっ…」


マダム・トンミーは、両脚をX字に閉じ、なんとかエレベーターホールの床を濡らさずに済ませた。そして、『凶器』で血塗られたように感じる額に手を当て、


「ああ…」


と、呻き声とも喜悦の息とも捉えることのできる音を発したマダム・トンミーの『一戦を交えたい』という願望は、遠からず叶えられることになったのだった………


「君が操作を覚えてくれるかね」


ビエール・トンミー氏が『原宿の凶器』であると聞いてから数日後のこと、マダム・トンミーは、彼女が所属するマーケティング部の部長から、そう指示された。


「システム開発部が説明してくれるから」


システム開発部にマーケティングの為のシステムを開発してもらっていたのが、完成したのだ。



(続く)



0 件のコメント:

コメントを投稿