「(トンミーさんって、やっぱりプロレスをなさるんだわ!)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、社内のエレベータホールにいる赤面している同僚のトシ代の横で、彼女とは別の意味で興奮していた。トシ代は、ビエール・トンミー氏が『原宿の凶器』であると聞き、その意味を知るトシ代は興奮を隠せないでいたのだが…一方、マダム・トンミーは、
「(『お局様』とだけでなく、私とも一戦を交えて欲しい!)」
と、ビエール・トンミー氏が彼女をヘッドロックに捉え、レフェリーの眼を盗んで凶器で(多分、ボールペンだ)彼女の額を突く姿を想像し、余りの興奮にお漏らしをしそうになった。
「うっ…」
マダム・トンミーは、両脚をX字に閉じ、なんとかエレベーターホールの床を濡らさずに済ませた。そして、『凶器』で血塗られたように感じる額に手を当て、
「ああ…」
と、呻き声とも喜悦の息とも捉えることのできる音を発したマダム・トンミーの『一戦を交えたい』という願望は、遠からず叶えられることになったのだった………
「君が操作を覚えてくれるかね」
ビエール・トンミー氏が『原宿の凶器』であると聞いてから数日後のこと、マダム・トンミーは、彼女が所属するマーケティング部の部長から、そう指示された。
「システム開発部が説明してくれるから」
システム開発部にマーケティングの為のシステムを開発してもらっていたのが、完成したのだ。
(続く)
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