「レンタルルームだけじゃないのよ」
顔を紅潮させた『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』に対し、同僚のトシ代が、追い討ちをかけるように、言葉を被せていった。ビエール・トンミーと人事総務部の『お局様』との噂である。
「池袋西口で、『逆さクラゲ』から出てくるところを見た人もいるんですって」
同僚のトシ代は、年齢に似合わぬ古臭い表現を使った。
「え?クラゲ?あの2人、クラゲ料理のお店から出てきたの?」
マダム・トンミーは、真顔で訊いた。
「あなた、巫山戯てるの?」
「だって、クラゲって…中華料理かしら?トンミーさんって、中華料理がお好きなのかしら?」
「カマトトって、あなたの為の言葉ね。温泉マークよお」
「温泉マーク?」
「そうよ、温泉マーク。湯気が3本立ってるやつよ」
「ああ、知ってるわ。温泉の入り口の暖簾なんかに書いてあるマークね。あの2人、一緒に温泉に行ったの?ま、まさか混浴!?」
「違うけどお….まあ、違わないような…」
「混浴だなんて、イヤらしいわねえ」
「『逆さクラゲ』で一緒にお風呂に入ったかもね」
「ええ?ええ?中華料理店を併設した温泉なの?スーパー銭湯みたいなものなの?」
(続く)
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