2020年11月15日日曜日

バスローブの男[その17]

 


「トシ代さん、プロレスのことをなんだと思ってらっしゃるの!?」


『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、そこが社内のエレベーター・ホールであることも忘れ、お嬢様社員とは思えぬ大声で、同僚のトシ代を批難した。


「な、何をムキになってるの?だってえ…」


トシ代は、マだム・トンミーの剣幕に後ずさりしながらも反論した。


「プロレスって、ショーでしょ。みんな、そう云ってるわ」

「少年隊や光GENJIのコンサートだってショーでしょ。人を楽しませのるがショーなら、ええ、プロレスは、ショーよ。そのことで、プロレスが馬鹿にされるの?!」

「でも、お芝居なんでしょ?痛めつけるのも、やられて痛がるのも本当じゃなくって、お芝居なんだわ」

「まあああ!じゃあ、コブラツイストかけましょうか!」

「いらないわ!コブラだか、アダブラカダブラだか知らないけど、興味ないし、どうせ態とかけられてあげないと、そんなのかけられないんでしょ」




「まああ!」


と、叫ぶと、マダム・トンミーは、トシ代の体に巻きついていった。



(続く)




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