「これは、9450です」
ビエール・トンミー氏が、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』にそう云った。2人は、マーケティング部の壁際に置かれたパソコンの前に並んで座っていた。ビエール・トンミー氏は、パソコンの説明から始めた。
「キューヨンゴーマル?」
マダム・トンミーが、小首を傾げた。ビエール・トンミー氏が口にした言葉は、彼女にとっては、暗号のような訳の分らないものであった。
「ええ、これはFACOM9450シリーズのパソコンです。というか、ワークステーションです」
ビエール・トンミー氏は、更に謎の言葉を発した。
「ワークステーション?」
パソコンなら、マダム・トンミーも知っていた。パーソナル・コンピューターを省略した言葉だ。
「ああ、パソコンはパソコンなんですがね、メインフレームの端末として機能するので、ワークステーションと呼んだ方がいいかもしれないんです」
「メインフレーム?」
マダム・トンミーの頭の中には、『?』マークが渦巻いていた。
(続く)
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