「頼んだよ、ね」
と、マーケティング部の部長は、自分の席に座ったまま『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』の背後から、彼女の肩に両手を当て、揉んだ。
「(ええーっ!)」
マダム・トンミーは、全身に鳥肌がたった。比喩ではなく、本当に彼女の全身が羽を剥いた鳥の肌のようになったのだ。
「(嫌だあ!)」
マダム・トンミーの鼻に背中の方から、加齢臭が漂ってきていた。
「(臭いー!......んぐっ!)」
思わず息を止めたが、体の芯が『疼く』のを感じた。しかし、その芯がどこにあるのかは、その頃はまだ分らぬものの、何故か、
「(違う!)」
と、その『疼き』を否定した。
「え?」
その時であった。そこに、まさに一陣の風が、吹いた。
(続く)
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