2020年11月22日日曜日

バスローブの男[その24]

 


「頼んだよ、ね」


と、マーケティング部の部長は、自分の席に座ったまま『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』の背後から、彼女の肩に両手を当て、揉んだ。


「(ええーっ!)」


マダム・トンミーは、全身に鳥肌がたった。比喩ではなく、本当に彼女の全身が羽を剥いた鳥の肌のようになったのだ。


「(嫌だあ!)」




マダム・トンミーの鼻に背中の方から、加齢臭が漂ってきていた。


「(臭いー!......んぐっ!)」


思わず息を止めたが、体の芯が『疼く』のを感じた。しかし、その芯がどこにあるのかは、その頃はまだ分らぬものの、何故か、


「(違う!)」


と、その『疼き』を否定した。


「え?」


その時であった。そこに、まさに一陣の風が、吹いた。



(続く)




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