「2人でレンタルルームに入るところを見たって人いるみたいよ」
マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミーに、同僚のトシ代が、噂話を囁いていた。ビエール・トンミーと人事総務部の『お局様』を歌舞伎町で見かけたという社員の話である。
「え?レンタルルーム?」
同僚のトシ代の口調には明らかに淫靡のニュアンスがあったが、マダム・トンミーは、『レンタルルーム』なるものを知らなかった。
「2人でお部屋探し?」
「あら、知らないの?ホテル代りよ。レンタルルームによるけど、30分で1,000円とか60分で1,500円とかもあって安いのよ」
「あら、そうなの。トシ代さん、お詳しいのねえ」
「え、まあ、そのねえ、ええ、短時間で済ませるときには、ホテルより手軽でいいみたいよ。ま、聞いた話ではね」
「ん?済ませる?...って、何を?」
「あなたって…本当にお嬢様なのねえ」
「ええ?ええ?」
「男と女が2人だけで同じ部屋に入るのよ。そこですることって、決まってるでしょ」
「ま、ま、まあ!」
マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミーの色白の顔が、みるみる紅潮した。
(続く)
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