「あのねえ!あなた、ラブホテルのことは知っているんでしょ?行ったことはなくても」
社内のエレベーター・ホールで、トシ代が、会社の同僚である『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』に訊いた。会社の女性社員の憧れの的であるビエール・トンミー氏と人事総務部の古株女性社員『お局様』とが、池袋西口のラブホテルから出てきたところを見たという噂をしていた。
「知ってるわ」
と、マダム・トンミーは、口を尖らせ、
「男と女が『ラブ』、ん…『愛』を確かめ合うところでしょ?どうやって確かめ合うのかはよく知らないけど」
と、小首を傾げた。
「まあ、色々な『形』で確かめ合うんだけどねえ。それにね、ラブホテルで『愛』を確かめ合うのは男と女だけじゃないのよ」
「ええ?それって、どういうこと?」
「男同士とか、女同士っていうのもあるのよねえ」
「ああ、友情ね。友情を確かめ合うのね」
「あなたって、本当に…友情を確かめ合うのにどうしてホテルに一緒に入らないといけないの?」
「一緒にゆっくりお茶でもするのかしら?」
「じゃあ、あなた、アタシと一緒にラブホテル行く?だって、友だちでしょ」
その時、トシ代の眼が、一瞬輝いたが、マダム・トンミーは気付かない。
(続く)
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