「(……見たわ、あの人のアソコを!んもう!)」
マダム・トンミーは、社内のエレベーター・ホールで、『お局様』が、夫(当時は、結婚前で、まだ夫ではなかったが)と2人で話している時に、手にしていた種類を態と落とし、ブラウスの谷間に夫の視線を誘導して、夫の体に『異変』を生じさせ、逆に自分の視線をその『異変』に向けたところを目撃したのだ。
「(あの時、同僚のトシ代がアタシに声を掛けなかったら、『お局様』、あの人に何をしたことだか!)」
同僚のトシ代が、マダム・トンミーの名前を呼んだので(当時は、まだ結婚していなかったので、旧姓で読んだのだが)、『お局様』は、エレベーター・ホールに他の社員がいると気付いたのだ。
「トンミーさん、今後は気を付けてね」
とキツい口調で、『お局様』は、如何にも若い男性社員に注意をしていただけよ、と見せかけたが、彼女の視線がまだ、夫の『異変』部分に向いていることをマダム・トンミーは、見逃さなかった。しかし…
「んぐっ!」
マダム・トンミーの視線も必然的に夫の『異変』部分に向き、彼女も、自らの体のどこかに『異変』が生じているような感覚に囚われた。
「あの2人、噂があるのよねえ」
エレベーター・ホールから立ち去る『お局様』とビーエル・トンミー氏の背を見ながら、トシ代が呟いた。
「歌舞伎町を2人で歩いてたって…」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿