「ええ?ええ?ええ?『タイイ』?」あ、『痛い』かって?ええ、そりゃ痛いわよ、プロレスですもの」
社内のエレベーター・ホールで、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、同僚のトシ代から聞いた恥ずかしい言葉をそうとは知らず、口にした、
「プロレス?」
トシ代は、プロレスを知らなくはなかったが、そこでマダム・トンミーからその言葉を聞くことを想定はしておらず、首を傾げはしたものの、
「ああ、アレのことをプロレスって云ってるのね。確かに、アレのことをプロレスって云うこともあるわよね。前のカレに、アレする時、『おい、プロレスするぞ!』って襲いかかられたことあったわ」
「あら、トシ代さんもプロレスなさるの?」
「違うわよ。アレのことをプロレスって云っただけ。アレは、プロレスと違って真剣勝負よ」
「え?どういうこと?プロレスと違って、って?」
「だって、プロレスって八百長でしょ?アレは、八百長ではないもの」
「まああー!」
「あら、どうしたの?」
(続く)
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