「ラブホテルって、温泉があるの?」
と、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、人差し指を顎に当て小首を傾げた。同僚のトシ代と社内のエレベーター・ホールにいた。
「はああ!?」
トシ代は、口を開け、眉毛を拗らせ、不快感を隠さなかった。
「あなた、ラブホテル行ったことないの?!」
「あら、トシ代さんは、いらしたことあるの?」
「そりゃ、あるでしょ」
「やっぱり温泉はあったのかしら?」
「んもう!お風呂はあるけど、温泉はないわよ!」
「じゃあ、どうして『逆さクラゲ』なの?『逆さクラゲ』って、温泉マークのことなんでしょ?」
「うっ……知らないわよ、そんなこと!とにかく、『逆さクラゲ』はラブホテルのことなの!」
「じゃあ、あの2人、『逆さクラゲ』に一緒に入っても混浴はしなかったのね?」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』と同僚のトシ代は、会社の女性社員の憧れの的であるビエール・トンミー氏と人事総務部の古株女性社員『お局様』との噂について話しているのだ。
「温泉はないけど、お風呂はあるから、一緒に入ったんじゃあないの」
「んまあ!結婚もしていない男女が、一緒にお風呂に入るなんて!」
(続く)
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