「あ、申し訳ありません。メインフレームというのは、ホストコンピューターのことです。大型コンピューターです」
システム開発部のビエール・トンミー氏は、マーケティング部の壁際に置かれたパソコンの前に並んで座る『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』に、彼自身が開発したマーケティングの為のシステムの操作を説明しようとしていた。しかし、
「ああ…」
と、マダム・トンミーは、操作説明の前提としての使用するコンピューターの説明に意識がどこかに飛んでしまいそうになっていた。
「ウチのホストコンピューターは、富士通のM-780なので、ワークステーションも富士通のFACOM9450シリーズなんです」
「ナナハチ…マル?」
「IBMだとワークステーションは、5550です。日立だと、2020ですね」
「ゴーゴーゴー…マル?ニー…マル?ニー…マル?」
「IBMをメインフレームとする場合は、IBM5550、日立ををメインフレームとする場合は、日立2020を端末として使います。で、ウチの場合は、富士通をメインフレームとするので、端末はFACOM9450という訳です」
「タンマツ?」
マダム・トンミーの意識は、ますます遠のいていきそうになった。
「あ、ごめんなさい。パソコンだの、ワークステーションだの、端末だの、色んな言葉を使ってしまって。見方、捉え方によって定義は変りますが、どれもこの9450のことです。いやあ、ボクってダメだなあ」
と、『原宿のアラン・ドロン』は、アラン・ドロンよろしく髪を掻きむしった。
(続く)
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