2020年11月26日木曜日

バスローブの男[その28]

 


「あ、申し訳ありません。メインフレームというのは、ホストコンピューターのことです。大型コンピューターです」


システム開発部のビエール・トンミー氏は、マーケティング部の壁際に置かれたパソコンの前に並んで座る『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』に、彼自身が開発したマーケティングの為のシステムの操作を説明しようとしていた。しかし、


「ああ…」


と、マダム・トンミーは、操作説明の前提としての使用するコンピューターの説明に意識がどこかに飛んでしまいそうになっていた。


「ウチのホストコンピューターは、富士通のM-780なので、ワークステーションも富士通のFACOM9450シリーズなんです」

「ナナハチ…マル?」

「IBMだとワークステーションは、5550です。日立だと、2020ですね」

「ゴーゴーゴー…マル?ニー…マル?ニー…マル?」

「IBMをメインフレームとする場合は、IBM5550、日立ををメインフレームとする場合は、日立2020を端末として使います。で、ウチの場合は、富士通をメインフレームとするので、端末はFACOM9450という訳です」

「タンマツ?」


マダム・トンミーの意識は、ますます遠のいていきそうになった。


「あ、ごめんなさい。パソコンだの、ワークステーションだの、端末だの、色んな言葉を使ってしまって。見方、捉え方によって定義は変りますが、どれもこの9450のことです。いやあ、ボクってダメだなあ」


と、『原宿のアラン・ドロン』は、アラン・ドロンよろしく髪を掻きむしった。





(続く)




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