「え?ラーメンなん?」
と、『エメンタル』を『えべっさん』と聞き違えた女子生徒が、また聞き違えた。ビエール少年が、さっきよりは少しだけ強い声で、『エメンタル』と云った為、『メン』だけを聞き取った結果であったのだろう。
1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。
「ラーメンにチーズ入れるん?」
「え、アメリカにもラーメンあるん?」
「『来頼店』みたいに美味しいラーメンは、アメリカにゃないじゃろう」
「なんねえ、『ライライテイ』いうん?」
「アンタあ、『来頼店』知らんのん?翠町にあるんよ。親戚が『広陵』の近くに住んどるけえ、ウチ、時々、『来頼店』に行くんよ。あそこのラーメン、いうか中華そばは、美味しいんよ。ウチ、大好きじゃけえ」
広島の有名ラーメン店『来頼店』は、昔も今も『県病院』電停前にあり、当時は(1967年である)、『広陵高校』が近くにあったのである。
「『来頼店』の中華そばには、細い卵は入っとるけど、チーズは入っとらんよ」
『来頼店』の中華そばには、錦糸卵が入っている。
「アンタら、何、ラーメンのこと話しとるん!『バド』は、『アーメン』、云うちゃんたよね」
少女『トシエ』が、他の女子生徒たちの誤解を指摘したが、自身もまた誤解していた。
「アーメンいうたら、キリストさんじゃろ?トンミーくん、キリスト教なん?」
(続く)
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