2022年9月23日金曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その274]

 


「うーん、そうだねえ、あれがいい匂いなのかどうかは分らないけど」


と、ビエール少年は、自らの鼻腔を広げ、松茸の匂いを思い出そうとした。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「でも、嫌な臭いではないね。そう、松茸もキノコで、だから『菌類』だけど、毒はないし、匂いだって多分、いいみたいだし、だから、『菌類』の一つのカビだって同じなんだ」

「ええ匂いのカビもあるいうことなんじゃね?」

「カビだって、同じというのは、正確には、毒のないカビもあるってことでね、あのね、カビ自体には臭いはないらしいんだ」

「ほいじゃけど、この間、お母ちゃんが、お兄ちゃんの柔道着、カビ臭うてたまらん、云うとったよ」




「ああ、ウチのお兄ちゃんの柔道着も凄い臭いんよ。お兄ちゃん、柔道着だけじゃのうて、学生服も臭いし、口も臭いけえ」

「カビ臭い、っていうのは、カビが作る物質とか、カビが餌にする物質なんかが、カビによって臭い臭いを出すようになるかららしいんだよ」

「じゃったら、チーズが臭いんは、カビの臭いじゃないん?」

「うん、カビは脂肪を分解して脂肪酸なんかを作るからみたいだよ」

「あれええ、トンミーくんいうたら、ウチの隣のおじちゃんのこと知っとるん?」

「はああ?」



(続く)




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