「アイツが触った本なんだぞ」
と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessgge
で、エヴァンジェリスト氏は忌まわしいものについて語るような口調を使った。
「当然ではありませんか。触らずにどうやって本を読むのですか?」
「アイツが、自分の手で触ったんだぞ」
「普通、足で触りはしないでしょう」
「アイツは、夜な夜な蠢いているんだぞ」
「蠢いているかどうかは知りませんが、『mRNAワクチンの衝撃』を図書館から借りて帰られた日も、夜通し、あの方の部屋には電気が点いていました」
「アイツは、その部屋で、鼻をフンガフンガ鳴らしているんだ」
「フンガフンガ、ですか?」
「そうだ。興奮しているんだ」
「そうでしょうねえ。『mRNAワクチンの衝撃』は、まさに日本人にとっては衝撃、と云ってもいい良書ですからねえ」
「アイツが、一晩中、『mRNAワクチンの衝撃』とやらを読んでいたと思っているのか?」
「違うんですか?」
「奥様が寝た後、独り、アイツが『秘密基地』と称する自室に籠って、エロ画像、エロ動画を見ては、サカリのついた犬のように鼻をフンガフンガ鳴らしているんだ。『mRNAワクチンの衝撃』とやらを読んだ後も、そうしたに違いない」
「まさかあの、大学教授以上に大学教授のような紳士が!?」
「君は大学教授が紳士だと思っているのか?」
「ではないのですか?」
「臭わなかったか?」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿