2022年9月28日水曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その279]

 


「な、な、納豆?」


と云うと、少女『トシエ』は、鳩が納豆鉄砲を食らったような表情で、ビエール少年を凝視めた。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「『バド』、朝ご飯に納豆食べるん?」


少女『トシエ』は、恐々とビエール少年に訊いた。


「ん?食べるけど…」


ビエール少年は、質問の意図を測りかねていた。




「どしたん?」


他の女子生徒が、体を硬直させたままとなっている少女『トシエ』に訊いてきた。


「『バド』が、『バド』がね。朝ご飯に納豆食べちゃってんじゃと」

「ええー!?ほんまねえ?」

「え?朝ご飯に納豆?」

「そりゃ、嘘じゃろう」

「『バド』は嘘つかんよねえ!ねえ、『バド』?」

「ああ、本当だけど…」


ビエール少年は、自分を取り囲む女子生徒たちが、どうして納豆のことでこれだけ騒つくのか理解できない。


「どうやって食べるん?」

「それは、醤油をかけて…」

「ひえーっ!」

「うそー!」

「ゲー!」


女子生徒たちは、一層に騒ついた。



(続く)




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