「知っとる、知っとる。ウチ、すき焼きに入れるシイタケ好きじゃけえ」
と、ビエール少年が、キノコも『菌類』だ、と説明したことに反応した女子生徒がいた。
1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。
「松茸もキノコじゃろ?」
「ウチ、松茸好かんけど、お父ちゃんは、美味しい云うとるんよ」
「お母ちゃんがねえ、お父ちゃんに、『松茸、そろそろまた食べたいねえ。今晩、お目にかかりたいねえ。うふん』云うとったけえ」
「松茸いうて、『お目にかかる』もんなん?」
「『うふん』いうん、何なん?」
「よう分らんけど、それだけ美味しいいうことなんじゃないん」
「そういうことなん、『バド』?」
と、少女『トシエ』は、ビエール少年に解答を求めてきたが、
「『お目にかかる』?『うふん』???ウチの母は、松茸のことをそんな風に云わないけど…」
と、さすがの博識な少年も、まだ中学に入学して1ヶ月も経ったばかりの『子ども』で、松茸に関する『大人な理由』は知らなかった。
「でも、父も母も松茸は好きだね。とっても値段が高いみたいだけど、香りがいいって」
「松茸はええ匂いなんじゃね?」
どこまでも『臭い(匂い)』拘る少女『トシエ』である。
(続く)
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