2022年9月27日火曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その278]

 


「どうせ、ウチの体は脂肪ばっかりじゃけえ」


と云って、女子生徒は、俯いて自らの体を見た。ビエール少年が、カビが臭いのは、カビが脂肪を分解して『脂肪酸』を作るから、と云った際に、『脂肪酸』を『須藤さん』と聞き間違えをした女子生徒である。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「なんも、そうようなこと云うとらんけえ」


眦を光らせる同級生の膨れっ面に、少女『トシエ』も怯んだ。


「脂肪ばっかりじゃけえ、ウチ、臭いんじゃあ!」

「そうようなことないよね。全然、臭うないし、アンタのこと、ぽちゃっとして可愛いねえ、とウチのお母ちゃんも云うとったけえ」

「おっぱいも大きゅうて羨ましいけえ」

「何、云いよるん!恥ずかしいじゃないねえ」

「ちょっと触ってみてもええ?」

「やめんちゃいやあ」


という女子生徒たちの嬌声の渦の中で、ビエール少年は、ふと話題の女子生徒の胸に目を遣ってしまった。




「『バド』、どこ見とるん!?!!」


少女『トシエ』は、ビエール少年の視線を見逃さなかった。


「え?!あ、いや…」


と、ビエール少年が、少女『トシエ』の詰問に身を少し動かした時、肘が、何か柔らかいものに少し当ったような感触があった。


「(んぐっ!)」


ビエール少年は、動かした肘の先を見ることはできず、体を硬直させたまま、視線だけを自らの股間に落とした。一方、


「(んっ、臭い!)」


と、少女『トシエ』は、一瞬、息を止めたものの、直ぐに息を戻し、むしろ鼻腔を大きく広げ、今感じた臭いを吸い込んで、ビエール少年に訊いた。


「『バド』は、朝ご飯は、パンにチーズなん?」


少女『トシエ』は、あらためてビエール少年から漂う臭いの元について確認しようとしたのであった。


「いや、和食だよ」

「和食?」

「ご飯に、海苔に、それからあ、やっぱり納豆だね」

「ひえっ!?」


少女『トシエ』は、間抜け顔になったことにも気付かず、口を丸く開いたままにした。



(続く)




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