2022年9月29日木曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その280]

 


「ほんまに醤油をかけるん、納豆に?」


あくまでビエール少年の味方である少女『トシエ』も、ビエール少年の言を信じることができず、小声になりながらも、そう訊いた。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「うん。醤油をかけて、かき混ぜるよ」

「嘘じゃあ!」

「ほんまにかき混ぜるん?」

「うん、一所懸命かき混ぜないとね」




「一所懸命かき混ぜるん?」

「ネバネバするようにね」

「ひえ~!納豆をネバネバにするん?」

「それで美味しん?」

「美味しいよ。かき混ぜた後、ご飯にかけて食べるのが好きなんだ」


納豆かけご飯の味を思い出し、ビエール少年は、喉を鳴らした。


「んげえ~!納豆をご飯にかけて食べるん?」

「醤油もついとるんじゃろ、納豆に?」

「勿論、父や母は、からしも付けたりするけど」

「え?ええ?からしも付けるん?」

「もう、甘いんか、しょっぱいんか、辛いんか分らんねえ



(続く)




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