2022年9月13日火曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その264]

 


「アメリカの人はみんな、キリスト教なんじゃろう?」


と、女子生徒の一人が、ビエール少年にそう訊いた。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


女子生徒たちビエール少年のことを、アメリカ(合衆国)から来た、もしくは、そこから帰日したように勘違いしている女子生徒たちの中の一人が、アメリカ人に関して誤解に基づく言葉を発したのであったが、今のように情報化社会となっていなかった当時(1967年である)では、致し方ない誤解であったかもしれない。日本人は大抵が、仏教、外国人(と言っても、外国人は、即ち、欧米人、と言う時代でアタ)は、キリスト教と思う時代であった。


「ウチの隣のお姉ちゃんは、『清心』に通っとってんよ。『清心』でアーメンしとってんじゃあ、思うんよ」


『清心』は、広島にあるカトリク系のミッションスクール『ノートルダム清心中・高等学校』であった。


「ウチの従姉妹は、『女学院』じゃけえ」


と別の女子生徒が張り合ってきた。『女学院』は、広島にあるプロテスタントのミッションスクール『広島女学院中学校・高等学校』であった。


「ああ、アーメンする時に、なんか口に入れてもろうとるんテレビで見たことあるんじゃけど、あれ、チーズじゃったんじゃね」


女子生徒たちは、ビエール少年から英語を習うことも忘れ、口々に勝手なことを云い出していた。




「いや、アーメンの時というよりも、『聖体拝受』のことだと思うけど、あれはチーズではなく、『ホスチア』(hositie)っていって、パンなんだ」


ビエール少年は、また女子生徒たちが、聞き間違えるんだろう、とは思いながら、間違いを正した。



(続く)




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