2022年9月18日日曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その269]

 


「いや、『ヤクルト』は、飲むチーズではなくって...」


と、ただ否定することしかできず、ビエール少年には、継ぐ言葉が見つからなかった。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「ほいじゃけど、『ヤクルト』は、『乳酸菌』なんじゃろ?じゃけえ、チーズなんじゃないん?」


ビエール少年に継ぐ言葉が見つけさせない女子生徒は、非論理的論理を展開してきた。


「あのお、『ヤクルト』が『乳酸菌』なんじゃなく、『乳酸菌』が入った飲み物が『ヤクルト』で…」


ビエール少年は、また言葉を詰まらせた。


「じゃけえ、云うたじゃろうがいねえ。『ヤクルト』は、小さい瓶に入っとる甘い飲みもんなんよ。チーズは入っとらん思うよ」


皆実町の祖母の家で『ヤクルト』を飲んだことがあるという女子生徒が、非論理的論理を展開する友人を叱責した。


「ほうなん。なんか『ヤクルト』はジュースみたいなんかねえ?」

「うーん、そこはよう分らんけど、甘うて美味しい飲みもんじゃけえ、ジュースいうたらジュースかもしれん。量が少な過ぎるう思うけどねえ」

「臭うはないん?」


臭いに拘る少女『トシエ』が訊いた。




「全然、臭うはないよおね」

「じゃあ、『ヤクルト』にゃあ、やっぱりチーズは入っとらんのんじゃね」

「あのお….チーズがみんな臭い訳ではないんだ」


ビエール少年が、女子生徒たちの会話に、恐々と割って入ってきた。



(続く)




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