「え?臭うって?」
と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏からのiMessggeに戸惑いを見せた。
「君が図書館から借りた『mRNAワクチンの衝撃』という本だ」
「え!?ええ…」
「臭くてたまらんかっただろう?その本は、アイツが、夜通し、エロ画像、エロ動画を見ては、フンガフンガした部屋においてあっただろうし、フンガフンガした後、その手で、洗いもせず、触っただろうからなあ」
「ああ、そう、あの方がお触りになったのですね!」
「栗の花の匂いではなかったか?」
「ですからあ、私、『栗の花の匂い』がどんなものか知りませんが、でも、とっても臭くてゲロを吐きそうで、でも、なんだかアソコが疼くような匂いがしたような…」
「ほほー、アレが君には『臭い』ではなく『匂い』だったのか。それにしても、あんな臭い本を(いやま、ワシは嗅いどらんから、臭いに決っとる、と思っているだけなんだがな)、君はまあ、よくも手にして読めたもんだ」
「手にして読んだだけではありません」
「臭くて、ゲロは吐かずとも、目眩でクラクラしたのか?」
「確かに、クラクラしました。でも、あの本をギュッと頬に擦り付けました」
「はああ?正気か?」
「そして、ええ、正直に申します。私、舐めました」
「はあ?」
「ええ、舐めたんですう」
「その『すう』は止めろ。何を舐めた、というんだ?」
「勿論、『mRNAワクチンの衝撃』ですう」
「へ?...へ?」
「でも、そこはそれ、図書から借りた本ですから、節度を持って、でしたが、ええ、私、『mRNAワクチンの衝撃』を舐めました」
「き、き、君は正気か?あいつが、フンガフンガした手で触った本だぞ」
「ええ、だから、舐めたんですう!」
「げっ!アイツ、確かに『ナンパ老人、危機一髪!』だ」
「いえ、あの方は、図書館前で若い女性にナンパされましたが、理性で躱されたのです。申し上げましたでしょ、内心、『へっ?』と驚いた様子が見えたものの、そこは少しも騒がず、『ハイ、そうなんです」とだけお答えで、何事も無かったように荷物をトランクに積んで走り去られたのです」
「いや、アイツ、今も、『ナンパ老人、危機一髪!』だ」
「え?」
「君だ。君がいつか、いや、遠からず、アイツを『ナンパ』するだろう」
「え?私が?」
「今日をもって君を解任する!君をビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員の任から解く!」
「え、お待ち下さい…!」
「ワシは、アイツの友人だ。それも世界でただ一人の友人だ。アイツを危機に晒したままにしておく訳にはいかん!」
と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員とのiMessageを切り、股間を抑え、トイレに向いながら、呟いたのであった。
「まあ、アイツが、あの特派員に『ナンパ』されて回春できるなら、それもいいんだろうが、そんなことより、今は、オシッコだ、オシッコだ。あの特派員の報告は長過ぎる」
(おしまい)
0 件のコメント:
コメントを投稿