2022年9月20日火曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その271]

 


「カビ、食べるん!?」


と、女子生徒の一人が、憧れのビエール少年から、少し身を引いた。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「んやあ、気色悪いねえ。ウチ、カビなんか食べんよ」

「正月のお餅にカビ生えたりするけど、ウチ、食べんよ。お母ちゃんは、『大丈夫よねえ』云うて、カビを削って食べるんじゃけど」




「いや、カビを削っても、お餅の中の見えないところにカビが根を張っていたりするから、食べちゃいけないよ」


と、ビエール少年が、問題はそこではないと思いつつも、『カビ問題』を解説した。


「ほいでも、トンミーくん、カビの生えたチーズ食べちゃってんじゃろ?」

「食べるけど…」

「カビの生えたお餅は食べちゃいけんのに、チーズはカビが生えとっても食べるん?」

「いや、カビといっても…」

「『バド』が食べるんなら、ウチ、カビが生えたチーズも食べてもええ」


と云った少女『トシエ』は、頬を朱に染めながら、ビエール少年を上目遣いに見た。


「そもそもカビは、菌類で…」

「え?『きんるい』?」

「ああ、細菌の『菌』で…」

「ひゃあ!細菌!カビは、細菌なんねえ!」

「ああ、気持ち悪う」

「細菌は、病気になるんじゃろ?」

「ウチ、嫌じゃ」


女子生徒たちは、両腕で自らの体を抱きしめるようにして、体を震わせた。



(続く)




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