「なんですか!?その含み笑いは!」
と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏からのiMessageに不快感を示した。
「君は、あの図書館の女性司書たちが噂していることを知らんのだ」
「想像はできますよ。『素敵なおじさまっ!』とでも云っているのではありませんか」
「確かに、紳士だとか、西洋美術史を研究する大学教授ではないか、という者もいるようではあるな」
「ああ、そうでしょう、そうでしょう」
「だがな、アイツが図書館の美術コーナーで『名画で読み解く「世界史」』の表紙を見て鼻息を荒くしていたところを目撃した司書もいるんだ」
「そりゃあ、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』は名画ですからね」
「君と同じで、アイツがドラクロワの芸術に興奮していたと思う司書もいるにはいたようだ」
「なんですか、また勿体をつけたような云い方をしてえ」
「アイツが立ち去った後に、ティッシュが落ちていたそうだ」
「あの方、風邪をお召しになっていたのではありませんか?それとも花粉症でいらしたか…」
「そのティッシュは、栗の花の匂いがしたそうだ」
「『栗の花の匂い』?どうしてそんな匂いが?栗の花の花粉症でいらしたのですか?」
「ふん!カマトトか、君は?」
「カマトトって、女性に対して云う言葉ではありませんか。まあ、私の場合…」
(続く)
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