(【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その257]の続き)
「え?.......」
ビエール少年は、席に着いたまま、思わず身を引いた。1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の英語の授業で、他の生徒が読めなかった英語の文章を、ビエール少年が、教師に指名され、難なく読んでみせ、席に着いたたところであった。
「(うっ!)」
隣席(ビエール少年の左隣) から、少女『トシエ』が、ビエール少年に、これまでになくグッと顔を近づけてきたのだ。しかし……
「(え?)」
ビエール少年は、少女『トシエ』の方ではなく、自らの下半身の方に眼を向けた。
「ねええ」
少女『トシエ』の鼻が、ビエール少年の左頬に付かんばかりとなった。
「(うっ!うっ!)」
俯くような姿勢をとっていたビエール少年の眼には、何故か、『ジニー』の像が映っていた。アメリカのテレビ映画『かわいい魔女ジニー』の『ジニー』である。
「(え?)」
匂ったのだ。ジニーが腰から下に履いている淡いピンクのスケスケなズボンのようなもの、というか、薄く透けたスカーフのようなものが揺らめいた時に起きる風が運ぶ匂いを感じたのだ。勿論、テレビの中のものなので、嗅いだことのない匂いではあったが、その匂いを本能的に嗅いでいたのだ。
「ええじゃろお?」
少女『トシエ』は、腰を浮かし、自らの肘をビエール少年の机の上に置いてきた。『ジニー』的匂いが、ビエール少年を覆った。
「(うっ!うっ!うっ!)」
(続く)
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