2022年9月24日土曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その275]

 


「ウチの隣のおじちゃん、凄う臭いんよ」


と、聞き間違いの得意な女子生徒が、自らの鼻を摘み、顔を顰めながら、そう云った。


1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室、放課後、英語を教えてもらおうと、数人の女子生徒が、ビエール少年をとり囲んでいた。


「え?」

「トンミーくんも、やっぱりあのおじちゃん、臭い思うたんじゃろ?」

「いや、そのおじさん、知らないけど…」

「さっき、『須藤さん』云うたじゃないねえ」

「へ?『須藤さん』?」

「ほうよねえ。やっぱり、隣の『須藤さん』のおじちゃんのこと、知っとんたんじゃね」

「いや、ボクは『須藤さん』とは…」

「『須藤さん』のおじちゃんは、体にカビが生えちゃったけえ、臭いんかねえ?」




「ええー!体にカビが生えとるん?!」

「ほうなんよ。顔なんよ、カビが生えとるんは」

「ひゃあ~!顔に!?嫌じゃあ!」


女子生徒たちは、興奮していた。


「なんかねえ、口の周りとか顎とかほっぺたなんかに生えとるんよ」

「自分で臭うないんかねえ?」

「臭い思うんよ。鼻の下にも生えとるけえね

「ウチ、そうような人見たことないけえ」

「青いいうか黒いいうか、ほら、有名な人でもおるじゃないねえ」



(続く)




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