「(アイツも、ボクが教えてやった数字の『魔法』に興味がないのか。アイツ、文學修士とはいえ、高校時代、ボク程ではないとはいえ、文系コースだったのに、数学はかなり得意だったはずなんだが…)」
と、ビエール・トンミー氏が、高校時代から、インテリジェンスとオゲレツの両面を持っていた友人のエヴァンジェリスト氏のハンサムな顔が、突如、両目が吊り上がり、口の両端が大きく裂けるように上向きに開き、般若の様相を示す様を想像したが、思い直したように、iPhone14 Proでそのエヴァンジェリスト氏に対して、iMessageを打ち始めた。
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「ああ、アンサン、高校時代、数学も得意やったあ思うたが、その後、文學修士様になったさかい、数字には興味ないんやな。ほな、言葉の話ししたろ」
「ワシ、オゲレツな言葉じゃったら、好きじゃけえ」
「じゃっかましい!黙って聞きなはれ。アンサン、今、銀行の話したな」
「ああ、銀行が、金融監督庁から、これからは自己責任じゃけえ、『自己査定』しんさい、云われたことじゃね。でも、自己責任で『自己査定』いうても、その後も、かなり長う当局は(今で云うと、金融庁じゃね)、結局、検査に来て査定はしとったみたいなんじゃがね。都合が悪いことが起きたら、自己責任じゃあ、云うて、銀行のせいにするんよ」
「またゴチャゴチャと。もう、その話はエエんや。まあ、聞きい。
『銀行員の行男は、修行のために諸国行脚を行った』
どや?」
「なんの修行なん?『自己査定』の修行なん?」
「この文章での【行】の読み方は、
・訓読み→行男、行う
(ゆき)、(おこな)と読む
・音読み→銀行、修行、行脚
(こう)、(ぎょう)、(あん)と読む
と5種類もあるで。ワテら日本人は、【行】という漢字の読み方を幾つも覚えなアカンけど、小学生でも読める。せやけど漢字一字一音の現代中国語を母国語とする人は、これに驚くんやて」
「アンタあ、中国人女性とも『ふか~い』お付合いしたことがあったんじゃね」
「その辺のことは、事務所を通してんか。でやな、中国では、漢字の発音は時代を経る毎にどんどん変っていったんやが、
日本では、
⓵ 飛鳥輸入された六朝時代の「呉音」
⓶奈良時代に輸入された隋唐時代の「漢音」
⓷ 平安時代に輸入された宗時代の「唐音」
がそれぞれ独自に引き継がれてきてそれが今では混在しとるんや」
「中国人女性いうても、中華人民共和国の女性とは限らんのお。台湾女性かもしれんのお」
「ギョっ!ギョっ!漁業協同組合!」
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「(し、し、しまったあ!アイツのくだらない駄洒落が耳に残っていたんだ!)」
と、ビエール・トンミー氏は、両手で両耳を覆い、頭を左右に振った。
(続く)
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