「(週刊ポストをあのレジの娘に渡す時、若い頃、ビデオ屋にエロビデオを借りに行った時のような羞恥感を覚えてしまった。でも、その羞恥感に『興奮」もした…)」
と、ビエール・トンミー氏が、『ヘアの森へようこそ ザ・陰毛 BEST HAIR35 -35人の漆黒ヘア- アンダーヘアは十人十色!あなたの推し”ヘア”が見つかる!』という記事が載る週刊ポストを、『アーミッシュの老いと終焉』という本を買ったのと同じ書店で、同じお気に入りのレジの若い女性店員から購入した時の感覚を思い出していると、友人のエヴァンジェリスト氏から、オゲレツiMessageが入った。
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「アンタ、ヨダレ流しただけじゃのうて、その記事、いうか、その記事にあった写真を舐めたんじゃないん?」
「アホ抜かせ!誰がそないなことすんのや。大事な学術書やで。それにやな、あの週刊ポストの記事ちゅうか写真は、『インモー』の大家たるワテにとっては大したことなかったんや。それだけワテの『インモー』に関する目ェが肥えたちゅうことやな。それに、云うか、せやから、家内の目ェもあるさかい廃棄したんや」
「なんねえ。やっぱり奥様に見られたらマズイもんなんじゃないんねえ。で、どうやって捨てたん?」
「折りたたんでゴミ箱の奥に捨てたんや。ゴミ箱のゴミ捨ては、ワテの家事担当やさかい問題ないんや」
「アンタの『インモー』研究の到着点は、『女性美術史学者』のソレを拝むことなん?」
「まあ、拝んでくれ、云うんなら断る訳にはいかへんやろけど、ワテの目的いうか技は、もっと高度なんや。電車の中で、眼の前に座った或いはチラっと見た女性の『インモー』をアリアリと頭の中に再現することや。あっ、対象は美人に限るで」
「アンタあ、犯罪スレスレじゃね。ワシのをアリアリと頭の中に再現せんでね」
「気色悪いこと、ぬかすんやないで。だからあ、美人のオナゴに限ると云うたやろ」
「アンタ、『日本インモー学会』作るん?いや、『世界インモー学会』かのお?それとも、もう『日本性機能学会』に所属しとるん?『日本性機能学会』では、日本人女性を対象に陰毛に関する意識調査を実施したらしいじゃないね。それ、アンタの提案なん?」
「もっともっと上行くねん。ゆくゆくは『ノーヘルインモー賞』の設立を目指しとる」
「おお!なんと!アンタあ、完全に『萩原眞一』名誉教授を超えとるねえ」
「ああ、せやった。『萩原眞一』君のことやった。でも、なんで、彼のこと話さなあかんねん?」
「アンタが、千葉に本拠地を持つ『千葉常胤』のことなんか云うてきたけえよ」
「せや、そこからアンサン、無理矢理、『千葉真一』のこと云い出したさかい『萩原眞一』君の話になったんやった」
「ほうよねえ。アンタ、名前の研究をしとるけえ、ワシに名前のこと色々教えてくれとったのに、『インモー』の話なんかするんじゃけえ。ちゃんと、名前のこと教えてや」
「アンサンが話をあっちゃこっちゃ持って行ったんやんか。まあ、エエわ。名前のこと、もう殆ど結論のことこまで行ってたんや。もう一回まとめたるが、鎌倉時代から平氏と源氏をルーツとする武士が増え、「『平』や『源』では家の区別がつきにくくなったんや。皆んな『平』のナントカだらけになったんやな。で、かわりにそれぞれの家が本拠を置く土地の地名が注目されるようになって、一族としては平氏なんやけど家を呼ぶには地名が使われるようになったんや。例えば、千葉に本拠地があるから千葉常胤、ちゅうことやな。もう『千葉真一』も『萩原眞一』も持ち出してくんのやないで」
「そりゃ、もう『千葉真一』の時代じゃのうて、『マッケンユー』と『ゴードン』の時代じゃけえね」
「へ?」
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「(アイツ、また訳の分らん方向に話を持って行こうとしてる)」
と、ビエール・トンミー氏は、幾度も繰り返された友人のやり口に怒りを通り越した感情から、自分の部屋の天井を、いや、虚空へと視線を遣った。
(続く)
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