「(電車の中だった。そう、現役のサラリーマン時代、夏、電車でつり革を持って立っている時、隣に若い女性が立ち、ボクの方の側の手でり革を持つと、『ワキガ』が、まさに、ぷ~んと臭ってきた。その時、ああ、そうだ、ボクは、確かにクラクラした…)」
と、ビエール・トンミー氏が、『ワキガ』の思い出に、いや、思い出臭に、思わず、股間を押さえた時、その思い出を嗅ぎとったかのようなiMessageが、友人のエヴァンジェリスト氏から届いた。
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「先生、アンタあ、電車の中なんかで、つり革を持つ若い女性の脇が汗で濡れとるんを見てもクラクラしとったんじゃないん?」
「な、何をアホ抜かすねん。他人を変態みたいに云うんやないで」
「アンタ、変態じゃろ?」
「まあ、それはそうやけど。まあ、エエ、『インモー』研究はやな、『モー』ちゅうくらいやから、毛の部分のみ研究対象なんや。それも、さっきも云うた通り、下の毛だけや。下の毛が描かれたルネサンスや現代絵画や写真全てが研究対象なんや。でも、あくまで研究対象は、毛の部分のみやで。『毛』の下の部分では研究対象が限られとるし、アソコは複雑で機能的な研究や医学的な研究が絡んで来るさかい、ジャマくさいんや。通は毛のみに着目すんるや。毛の下の部分の研究者はディープ過ぎて数が少ないで」
「ほうなん?ワシ、てっきり、アンタは『インモー』の陰に隠れて、いうか、『インモー』の陰にあるそのディープな部分の研究しとるんじゃあないかあ思うとった」
「ちゃうで。『インモー』研究だけで、そら大変なんや。『インモー』研究はやな、またその範囲が、形態、量、質、色、長さと多岐に渡ってんねん。『インモー』のバラエティに富んどるところが、『インモー』研究範囲の広さと難解さの元になっとんのや」
「あれ?形とか色とか云うとってじゃったけど、臭いの研究はせんのん?」
「匂いを研究する者は異端や。彼らは我々正当な研究者から、『匂いは、単なる嗜好であって、研究ではない』と論破されとる」
「あれ?『臭い』じゃのうて、『匂い』なんじゃね、アンタにとって。うーん、なんか怪しいのお」
「うっ…」
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「(うむ。油断ならんな。アイツ、フランス文学専攻だったとはいえ、やっぱり文學修士だ。ちょっとした言葉の使い方から、深層に入り込んでくる)」
と、ビエール・トンミー氏は、自然と身を固くし、座ったままながら背を伸ばした。
(続く)
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