「(『フィナンシェ』と『マドレーヌ』との区別の話なんかのに乗らなければよかったんだが、アイツ、最初は、『マドレーヌ』ではなく『フィナンシェ』のことに触れて来たんだ。時間をロスした、ということから、『プルースト』の『失われた時を求めて』を発想して、『マドレーヌ』へと話が展開するところを、『失われた時を求めて』とは関係のない『フィナンシェ』を持ち出して撹乱して来たんだ。狡猾な男だ)」
と、ビエール・トンミー氏が、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏がいつもはオゲレツで巫山戯たことばかり云っているが、実は、『OK牧場大学』の大学院修士課程を修了した程の知性というか頭の良さの持ち主であることをあらためて感じていると、そのエヴァンジェリスト氏から、相変らず惚けたフリのiMessageが入って来た。
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「ああ、アンタが『失われた時を求めて』おったみたいじゃけえよね」
「いや、ワテは、『失われた時を求めて』なんかいてへんかったんや」
「『ロスした時間を返して欲しい』云うたじゃないね」
「そや、ワテが云うたんは、『ロスした 時間を返して欲しいわ』であって、『失われた時を求めて』なんか云うてへんかったんや。『ロスした時間を返して欲しいわ』云うたんも、アンサンの誘導や。『時間をロスした』とか、どの口が云うねんてこと云うて、アンサン、ワテを『失われた時を求めて』に誘導したんや」
「アンタのコジツケの連鎖も凄いのお」
「アンサンは、『失われた時を求めて』に誘導して、次は、『マドレーヌ』の講釈を垂れるつもりやったんや。けど、『失われた時を求めて』からいきなり『マドレーヌ』を持ち出さず、一旦、何の関係もない『フィナンシェ』を持ち出しておいて、『マドレーヌ』と『フィナンシェ』の違いいうような話にしておいて、そこから『マドレーヌ』談義に持ち込んで、『ホタテ』やの『サンティアゴ巡礼』へと話を展開させて、その間に、ワテが食べとるかもしれん『マドレーヌ』を売っとる店をデジタル・ハンターしたんや。で、『ベルグの4月』→『レマン湖』のほとりの『ベルグ』→『チャップリン』→『高野虎市』→『杉浦圭子』と持って来たんや」
「おお、アンタあ、さすが『ミスター・メモリー』じゃね。『歩くUSBメモリー』云うてもええかもしれんのお。でものお、最近は、『USBメモリー』のような形状の、スティック・タイプの外付けSSDがえろう安うなってきとるけえ、『USBメモリー』の存在意義が薄れてきとるんよ.SSDの方がずっと大容量じゃけえねえ、小さいんでも256GBあるし、1TBのでも1万円以下で手に入るけえ」
「またそうやって、話を逸らそうとしてんのやな。そうはさせへんで」
「そうかあ、アンタあ、『歩くUSBメモリー』じゃのうて、今度から、『歩くスティック・タイプの外付けSSD』と呼ぼうかのお。でも、そんなアンタでも、まだ知らんことあるんよ。『山本さん』のことも知らんじゃろ?」
「はっ?『山本』はん?どこの『山本』はんや?『山本』いうお人は、世にぎょうさんおるやないか」
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「(アイツう、また突然、脈絡のないようなことを云い出して来て、こちらを攪乱しようとしているんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、心の中で、両脇をぎゅっと締めたボクシング・ポーズをとった。
(続く)
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