「(でも、『月にうさぎがいた』の方が、まだ罪はなかった)」
と思いながらも、ビエール・トンミー氏が、友人のエヴァンジェリスト氏が高校時代に書いた『月にうさぎがいた』という、宇宙飛行士が、月で発見したうさぎを地球に連れ帰って、連れ帰ったうさぎと会見に臨むという話を、50年以上経っても未だ覚えている自分に腹立たしさを感じていると、エヴァンジェリスト氏から、やや意外なiMessageが入ってきた。
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「けど、『大谷亮平』じゃないけえ」
「え?まさか、本当に『大谷翔平』はんや、と云うんやないやろな?」
「じゃけえ、ワシ、『オータニさん』、つまり、『大谷翔平』のこと、話しとらん、云うとるじゃろ。ワシが云うとるんは、『オータニ』さんよおね」
「やからあ、誰やねん、その『オータニ』さんは?カタカナで『オータニ』と書くんは、態とらしいで。どうせ、普通の日本人やろに。『大谷翔平』はんは、MLBの、つまり、米国でもスーパー・スターやさかい、『オータニさん』とカタカナになるんは納得やけどな」
「あんなあ、アンタあ、『オータニ』さんをバカにしんさんなよ。『オータニ』さんは、ハワイ・オアフ島生れの日系三世『タニー・オータニ』なんじゃけえ」
「あ、日本人やなかったんか?」
「いや、日本人なんよ」
「今、『日系三世』やと云うたやないか。ああ、米国籍やけど『日系三世』やさかい『日本人』ちゅうことか」
「違うけえ。『オータニ』さんの国籍は、日本じゃと思うで」
「意味判らへん」
「『オータニ』さんは、ラスベガス生れの日系三世の『ドリー・キムラ』と一緒の時は、『タニー・オータニ』になるんよ」
「ありゃりゃ、またまた妙ちくりんな奴、出してきよったでえ。もう、訊かへんで、『ドリー・キムラ』はんて、誰や?とな」
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「(訊いてなくても、勝手に説明してくることは、ああ、分ってる)」
と思うビエール・トンミー氏の心は、苛立ちに包まれながらも、諦念からか、どこか穏やかであった。
(続く)
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