「(そうだ。アイツの為に、金を使っている場合じゃないんだ)」
と、ビエール・トンミー氏が、iPhone14 Proの、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏とのiMessage交換とは別のメッセージ受信先の画面を深刻そのものの顔で凝視めていると、エヴァンジェリスト氏から、神経を逆撫でするiMesageが入ってきた。
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「アンタあ、まさかフィッシング詐欺にでも引っ掛かって、金がのうなったんじゃないじゃろねえ」
「アホ!誰が、あんなメッセージに引っ掛かるんや!」
「『あんなメッセージ』?」
「あ、いや、それ、あれや。フィッシング詐欺いうたら、ほれ、ネットなんかでよう紹介されとるやろ」
「メッセージに、アンタの口座で入金トラブルなんかがあったけえ、直ぐに、ココ(URL)にアクセスして対応しんさい、いうようなんが入ってくるんじゃろ?」
「ああ、そうなんや。あ、いや、普通、そんな感じなんやろな」
「おお、近々、クルマ(ベンツ)の買換えを控えとって、生命保険会社から、銀行の口座に入金が予定されとったりしとると、ついついそのURLをクリックして、ID/パスワードを入力してしまうんじゃろうねえ」
「そうなんや。いや、そうなんやろうなあ。でも、なんで近々、入金が予定されとることを知ってんのやろ?」
「アンタ、真面目に云うとるん?」
「ああ、真面目や、大真面目や」
「説明するまでもない、当り前のことじゃけど、アンタ、ワシがちゃんと知っとるか、試そうとしとるんじゃろうけえ、説明しょうかあ」
「ああ、説明してみい」
「フィッシング詐欺にせよ、オレオレ詐欺にせよ、無差別にああようなメッセージを送るんよ。何万人にものお。そうすると、その中にゃあ、丁度、入金があるところじゃとか、合致するような状況の人間もおるんよ」
「ああ、おるやろ、おるやろ」
「で、そういう人間の中に、そのメッセージに乗って、ほいほいパスワードを入力してしまうもんもおるんよ。それだけのことよ」
「ああ…ほいほい、やな…」
「で、この手の『メッセージ』は、100%詐欺じゃと思うんが、世の常識で、ワシは、ワシがパソコンやスマートフォンでの困ったこと対応してあげとるお客さんにゃあ、ほいほい騙されんさんなよ、と注意しとる」
「いつもなら、『なんや、この偽メッセージは』と馬鹿にするお人でも、今回はあまりに状況が一致したんで、無意識に反応してしまうんじゃろう」
「『今回は』?」
「いや…そのお人にとって、そん時だけは、丁度ちゅう感じなんやないか、云うことや」
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「ああ、ああ、ああ…」
と、ビエール・トンミー氏は、独りいる自分の部屋で、言葉にならない声を出していた。
(続く)
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