「(アイツが、ベンツの駆動方式に興味があろうとなかろうと構わん!さあ、語るぞお!)」
と、ビエール・トンミー氏が、ベンツのマフラーを強く吹くように、自らの鼻から強く強く息を吹き出し、その勢いそのままのiMessageを、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏に送った。
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「今のワテの『Eクラス』は、『ガソリン駆動』なんや。せやさかい、『ディーゼル駆動』は、馴染みがないねん」
「ワシは、『ディーゼル』、懐かしいんよ。『丹那』知っとるじゃろ?」
「は?『丹那』?」
「アンタあ、『牛田』から、青バス(広電バス)で『翠中』(翠町中学校)のとこまで来とったじゃろ?」
「ああ、『翠町』のアンサン家(ち)によって、そこから、アンサンと一緒に、『皆実高…』、いや、高校に行くようになったさかいな」
「アンタあ、『皆実高校』に行くんに、そうような面倒なルートをとることにしたねえ。よほど、ワシのことが好きじゃったんじゃね?」
「アホ、誤解生むようなこと、云うんやあらへん。アンサンと仲は良かった、ただそれだけのことや」
「よう『間違い』が起こらんかったもんじゃ」
「バカか!『間違い』なんか起きへん!」
「でも、アンタが青バス(広電バス)で降りたバス停は、『中国自動車学校前』じゃったじゃろ?それは、『間違い』ないじゃろ?」
「あんなあ、態と紛らわしい言葉遣いするんやないで。でも、確か、そないなバス停やった、と思うで」
「自動車教習所の『中国自動車学校』の横の土手上にあったんが、『宇品線』の『丹那駅』なんよ。ワシん家(ち)は、ワシが幼稚園の頃まで『宇品』の長屋に住んどったけえ、ワシの父親は、『丹那駅』から『宇品線』で『トーヨー』(東洋工業)まで通っとったんよ。その頃はまだ、『トーヨー』の宇品工場から『向洋』の本社までの『東洋大橋』ができとらんかったけえ、『広島駅』まで行って、乗り換えて『呉線』で『向洋』まで行かんといけんかったんよ」
「そりゃ、えろう遠かったやろな」
「での。『宇品線』は、大昔は勿論、蒸気機関車じゃったと思うけど、ワシが物心つく頃にゃあ、確か、『ディーゼル車』じゃったんよ。父親は、『ディーゼル車』で『トーヨー』まで通うとったんよ。じゃけえ、『ディーゼル』は懐かしいんよ」
「はあ~…」
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「(アイツ、『ディーゼル』という言葉だけで、ベンツとは何も関係ない、自分の思い出を語りやがって。でも、『牛田』からアイツの家経由で『皆実高校』まで通ったのは確かで、それはそれで懐かしい)」
と、ビエール・トンミー氏は、まだ穢れを知らなかった高校生の自分の姿を思い出していた。
(続く)
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