今しがた、治療を終えて帰って行った老人について、看護師のアグネスが、受付をしている同僚に吐き捨てるように云ったのであった。
「あの爺さん、きっと変態よ」
同僚のシゲ代は、
「でもあの方、トンミーさんって、とっても知的に見えてよ。大学教授みたい。素敵なおじさまで一度、お茶でも飲みながらお話したいくらいだったのに」
と云ったが、アグネスは、大きく被り振り、云った。
「駄目よ、騙されたら。ドライアイになったのもね、きっと........」
(参照:変態爺さん、眼科に現る。(前編))
=====================
「.......きっと、深夜、ネットでエロ画像かエロ動画を見過ぎてるからなのよ」
眼科の看護師アグネスは、受付をしている同僚のシゲ代に、そう云ったが、それは、自分自身に向けての言葉のようでもあった。
「ええーっ、うそお!あの紳士がそんなことを」
「さかりのついた中学生と同じなのよ」
「ま、フケツだこと!さかりのついた中学生がナニをどうするのか知らないけれど」
「ここに通院してるのだって、院長か私が目当てなのよ」
「そうなの!?」
「院長って、美人眼科医で有名でしょ」
「ええ、トシ江先生って、ホントお美しいわ」
「私の太ももを見に通う患者さんも結構いるのよ」
「アグネスさんの太ももって、女の私から見ても素敵ですものね」
「まあ、それほどでもないけど。でも、あの爺さんは、本当に舐めるように私の太ももを見るのよ。きっと、家に帰って思い出しては何かしているのよ」
「何かって、何?」
「知らないわよ、変態のすることなんか。あの爺さん、治療中から変態なんですもの」
「まあ!治療中から?」
「そうよ、ドライアイだから目薬をさしてあげるんだけど、その時、『ううーっ』って変な声出すのよ、アイツ」
「効いてるのね」
「そりゃ、効くわ。目薬といっても医療用ですものね。でも、あの『ううーっ』って声は普通じやないわ。分かるのよ」
「他の患者さんだって同じじゃないの?」
「違うの。あの爺さんの顔は、苦痛に歪みながら、どこか快感を得ている顔よ。普段、紐で縛られたり、鞭でぶたれて悦んでるのじゃないかしら」
「そんな趣味の人がいること、聞いたことはあるけど、トンミーさんがそうだったなんて!」
「そんなに虐められたいんだったら、私がほっぺた殴ったり、抓ったりしてやるわ。ハイヒールで踏んづけちゃおうかしら」
「あら、アグネスさんったら...」
「あの爺さん、点眼で体を近づけると臭うのよ。老人臭と汗とが入り混じった独特の臭いよ」
「あら、気付かなかったわ」
「あの臭いを嗅ぐと、ついムラムラ、あっ、いえ、ムカムカしちゃって、ええい、どうだ、って目薬を思いっきり、あの爺さんの眼にさしいれちゃうの」
「アグネスさん、あなたって、ひょっとして......」
「似てるのよ、あの爺さん。高校時代に私を棄てた男に」
「アグネスさん、やっぱり、あなた、トンミーさんのことを....」
シゲ代は、一人興奮を高めていく同僚が心配になった。
しかし......
「いいのよ、あんな奴、ヒィヒィ云わせてやれば」
アグネスはもう、止まらない。
「でも、アイツ、ヒィヒィ云って悦ぶんだわ。だって、ヘンタイなんだから!」
「アグネスさん.......」
「今度、ヘンタイ野郎のアソコにも目薬をきつ~くさしてやる!」
(おしまい)
0 件のコメント:
コメントを投稿